心因性視覚障害

小学校の健診などで視力が落ちて、眼科に行ったら検査員や医師から「裸眼視力があまりよくないですね~」と言われることがよくあります。その場合、近視などの屈折異常が多いのですが、まれに「心因性視力障害」という病気が隠れていることがあります。つい最近までとても視力がよく、他に目の病気がない場合はこれを疑うことがあります。

・心因性視力障害って何?

「心因性視力障害」は眼科の医師が診察しても目には何の病気もないのに、なぜか視力検査の時に、裸眼視力が0.3とか悪い結果がでます。ところが度数が入ってないレンズを入れたメガネをかけさせると、いきなり1.0まで答えられたりすることがよくあります。多くはこれで診断がつきます。基本的に小学生くらいの女の子に多いですが、男の子に起きる場合もあります。基本的に、失明したり、後遺症が残るものではありません。

・なんで起きるの?
原因はお子さんの「心=気持ち」にあります。
お母さんとの「かかわり」の中でお子さんの心に、なんらかのひっかかりができると、それが原因となってよく見えなくなってしまうのです。でも精神科にかからなくてはならないような重症例はわずかで、うまく治療すれば治っていきます。
お母さんとの関わりをひと工夫することが治療のポイントになります。

家庭以外の学校や塾、習い事の中でのストレスも原因になりうるという意見もありますが、やはり最も多いのは家庭の中です。

・どんなときに起きるの?

「心因性視力障害」に多いパターンとしては2つあります。

1.お子さんが「お母さんにかまってもらっていない」と感じてしまっている。
2.お母さんにかまってもらっているけれど、本当にしてもらいたいこととずれている。

1は下に弟や妹がいるお子さんに多く、2は逆に一人っ子や末っ子のお子さんに多い傾向があります。

そして心因性視力障害になるお子さんは「自分の欲求を言うとお母さんに悪い」と思って、ぐっと飲み込んでしまう、いわゆる「いい子」に多いと言われています。「でも本当はお母さんにわかってほしい・・・。」そうやって心の綱引きをしているうちに発症してしまうのではないかと考えられています。

・どうすればいいの?

心因性視力障害の場合、まず1か2かを見極めて、それに応じて、ちょっとした工夫をすることでよくなることがほとんどです。ただ、その見極めや治療はお母さん一人では難しいので、眼科で専門のスタッフと一緒に治療することが大切なポイントです。

・大切なこと

もう一つ、これも最も大切なことですが、心因性視力障害はお母さんのせいではありません。子供への愛情不足や配慮が足りないことが原因ではありません。もちろんお父さんや他の家族のせいでもありません。お母さんがどんなにお子さんを愛していても、ちょっとしたすれ違いで誰にでも起きてしまうかもしれないものです。
だからお母さんが一人ぼっちで「自分のせい」とは誤解せず、「よし、助けてあげられるのは自分しかいない。がんばろう!」と前向きに考え、眼科のスタッフと一緒に進めたほうが、治療はうまくいきます。