重症筋無力症(じゅうしょうきんむりょくしょう)

重症筋無力症とは

全身の骨格筋(*)の力がなくなっちゃって疲れやすくなる病気です。自己免疫疾患(じこめんえきしっかん)といって、本来バイキンとかが体に入ってきたときにやっつけてくれるはずの「免疫」が、バイキンがはいってきてないのになぜか勝手に立ち上がってきて、なんと自分の体を攻撃してくる病気です。女性に多くて、5歳未満の幼児と20~50代の2つの世代に起こりやすいです。遺伝はしません。

眼だけやられるタイプと、全身に来るタイプの2つあります(眼筋型と全身型)。

*骨格筋:骨に沿って付いている筋肉のことで、身体を支え、動かしている。ふつう、単に「筋肉」といえばこの骨格筋のこと。

原因
ふつう脳から神経がでて最終的には神経は筋肉にたどり着きます。この神経と筋肉がくっつくところ(*)に本来バイキンとかから自分を守ってくれるはずの免疫が攻撃して、神経から筋肉に信号が伝わらなくなるために筋力の低下が起こります。

*筋肉側にあるアセチルコリン受容体というところが自己抗体=免疫に攻撃されます。

症状

眼筋型
・ 眼瞼下垂(がんけんかすい):まぶたが下がることです。毎朝、起きた時は症状がないのに、夕方にかけてひどくなります。小さい子で両眼の場合は、まぶたが落ちちゃっているので、顎を上げてものを見ていることがよくあります。眼瞼下垂に左右差がある場合は、よりまぶたが下がっている方の眼が弱視になってしまうことがあるため、早いうちに弱視を予防してあげないといけません。
・眼球運動障害:上下左右斜め、どこの方向へも目がうまく動かせなくなります。その結果、複視(ものがダブってみえる)を自覚することもあります。

全身型
全身の筋肉に力が入らなくなります。疲れやすくなり、物をうまく飲み込んだり出来なくなることもあります。重症になると、息をするための筋肉も麻痺してしまって呼吸困難を来すこともあります

診断
「テンシロンテスト」:エドロホニウム塩化物という薬を静脈から注射して、眼瞼下垂や眼の動きの改善がみられるか  反応を調べます。重症筋無力症だとテンシロンで改善します。

「疲労誘発試験」:上を90秒グッと見てもらって瞼が落ちてきたり、普段よりも落ちたら陽性です。

①両目を15秒閉じる

②90秒めいっぱい上を見てもらう(けっこうつらいです)

③もう一回両目を15秒閉じる(休息)

④両眼をあけてもらう。

この4段階のなかで、②で症状(主に眼瞼下垂)の増悪がみられ、④で軽快がみられます。「シンプソン試験」とも言います。

「冷却テスト」:氷(アイスパック)をまぶたにぎゅっと押し当てて3分間冷やして、眼瞼下垂が改善したら陽性です。

「血液検査」:自分の体を攻撃している免疫=抗体があるか調べます。だいたい犯人は下の2つの抗体のどっちかです。

①抗アセチルコリン受容体抗体
全身型の80%で検出され、眼筋型では全身型より少ないです。

②抗マスク抗体(*) *筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)
抗アセチルコリン受容体抗体陰性の場合、残りの約20%の患者さんにマスクに対する抗体がみられます。

③どっちも出ない場合があります。この場合何が攻撃しているのかわかりません。

・「斜視・眼球運動検査」:斜視(眼の位置ずれ)や眼の動きが悪くなっていないか調べます。

治療
神経と筋肉がくっつくところの連絡をよくするために、抗コリンエステラーゼ薬、自分を攻撃してくる免疫をおさえる力のあるステロイド薬などで治療します。薬でダメなら、弱視の予防や両眼視機能をきちんと発達させるために、まぶたの手術や斜視の手術をすることがあります。